学生・卒業生の声

情報生命科学専攻の学生や卒業生の声です。


DNAの3次元構造が生物進化に影響する 

佐々木 伸 (2008年3月博士課程修了)

 DNA 塩基配列に起こる変化(塩基の置換や挿入削除)は、生命の多様性や進化につながる遺伝子の変化に影響を与えている。遺伝子あるいはその発現に影響を与えるDNA 領域としては、タンパク質配列のコーディング領域、転写が開始される転写開始領域、転写の制御に関わるプロモーター領域などが知られており、一般的にはこれらの領域はその機能の重要性から変化が抑制されている(保護されている)傾向にあると考えられている。我々は南日本由来と北日本由来の2 系統のメダカのDNA 配列を比較し、転写開始点や遺伝子領域の情報と組み合わせて、上記にあるような一般的なDNA 配列の保護傾向を確認した。しかし、このメダカでのDNA 比較においては、すでによく知られていた前述の傾向の他に、転写開始点下流(転写領域)において転写開始点から一定の距離間隔ごとに塩基置換率と挿入削除率が周期的に高まるという現象を発見した。どちらの変異率についても約200 塩基の周期性を持っていたが、塩基置換率は転写開始点下流200 塩基、400 塩基、…の位置で上昇するのに対し、2 塩基以上の挿入削除率は転写開始点下流100塩基、300塩基、…の位置で上昇しており、それぞれ逆の周期性を示した。
 一方、DNAに関わる構造で約200 塩基を単位とするものとして、DNAがヒストンタンパク質の8 量体(ヌクレオソームコア)に巻き付いたヌクレオソームと呼ばれる構造がある。我々はメダカの胚胞細胞より、ヌクレオソームコアに巻き付いたDNA 断片を抽出し配列決定を行い、それらの位置情報をメダカのDNA 配列に対してマップした。その結果、転写開始点の下流において転写開始点から約100 塩基、300 塩基、…の位置を中心としてヌクレオソームが存在しているという傾向を明らかにした。転写開始点を基点として、塩基の変異率における約200 塩基の周期性とヌクレオソーム位置についての約200塩基の周期性が同期していることが確認され、塩基置換についてはヌクレオソームの領域において、塩基の挿入削除についてはヌクレオソーム同士の間のリンカー領域において高まる相関傾向にあること、ヌクレオソーム構造が塩基配列の変化に影響を及ぼすことが明らかになった。
 今後はヌクレオソームと塩基の変異についての具体的な物理的なメカニズムについての解明と、転写開始点の下流に特異的なヌクレオソームと塩基変異の分布と転写との関係性の観点から、転写発現メカニズム全般についての研究の進展が期待される。

(2010年6月, GCOE若手研究者紹介より転載)


創薬奮闘中 

岡田 欣也 (2008年3月博士課程終了)

 2008 年3月に当研究科情報生命科学専攻を卒業後、田辺三菱製薬株式会社に入社しました。就職を決めた理由は、薬学に関する学識は浅いながらも、創薬という切り口で社会に貢献したいと思ったからです。
 幸いにも研究部門のバイオインフォマティクスグループに配属され、学生時代に培った情報生命科学の知識と技術を生かしながら、バイオシミュレーション、データベース開発、ゲノム解析などの様々な業務を行っています。薬理・標的探索などの実験系の研究員との共同業務に必要な薬学・医学に関する知識や技術の習得はとても大変ですが、創薬過程の一翼を担える充実感を感じつつ、忙しく仕事に打ち込む毎日です。
 技術やデータに日々対応していかなければならないのです。このような未経験業務への挑戦には、専門分野以外のセミナーや学会にも積極的に参加し様々な研究内容に触れてきた学生時代の経験がとても役に立っていると感じます。
 もうすぐ2 歳の長男はできることをどんどん増やしています。息子に負けないようパパも日々成長していかなければならないと思う今日この頃です。

(2009年9月, 「創成」第14号より転載)